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古旗淳一会計事務所

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できる?環状・網状の株式持合(循環出資)の相続税対策

自社株式の相続税対策として、

環状に株式を持合う企業集団を作って、個人株主がいない状況にすれば、相続税の問題から解放されるのではないか?

という質問をいただきました。

たとえば、自社A社を事業承継する際に、関係会社としてB社とC社を作り、A社にB社の株式を、B社にC社の株式を、C社にA社の株式を持たせます。A→B→C→A→・・・という親子関係の環状の企業集団(循環出資)を作れば、形式的にはいずれの株式もオーナーの手から離れ、相続税対策になるのではないか?というアイディアです。

この類似策として、A社株式をB社とC社が半分ずつ、B社株式をA社とC社が半分ずつ、C社株式をA社とB社が半分ずつ持つという、網状の企業集団も考えられます。

 

さて、はたしてこの方法で本当に相続税対策になるのでしょうか?

 

結論から言いますと、相続税対策にはならず、税務否認リスクが極めて高いと考えております。また相続税の問題だけではなく、事業承継上様々な問題を持っています。

以下、法務、税務、経営の各面から問題点を見ていきましょう。

 

①法務面の問題

会社法では、「親会社」の株式を取得することは、一部例外を除き禁止されています(会社法135条1項)。

子会社とは親会社に支配されている立場ですから、親会社株式を持つことで逆に親会社を支配する立場になってしまうと、どちらが支配者かわからなくなってしまうためです。(実際は他にも色々な理由があります)

親会社株式の取得が禁止されているのは、そのような趣旨によるものですから、当然、環状・網状の株式持合をすることも禁止されています。親会社とは、子会社の株式の過半数を直接・間接に保有する会社とされていますから、いわゆる祖父会社でも、会社法では「親会社」の定義に該当し、親会社株式取得禁止規定に抵触します(会社法施行規則3条)。

よって、環状・網状の資本関係を形成する一連の取引過程で、親子関係が生じてしまった段階で、それ以降の株式取引は違法なものとなります。

 

②税務面の問題

違法で、かつ、非常に不自然な資本関係の形成であり、相続税の回避が主たる目的であることは明らかです。よって、これによって税負担が減少している場合、税務調査では何らかの方法で否認され、追徴課税(及び重加算税)が課されるリスクが極めて高いと考えます。

課税当局がどのような理論構成で否認するかはわかりませんが、おそらく「同族会社の行為計算否認」(相続税法第64条1項)の規定が使われるものと思われます。

この規定を簡潔に説明すると、オーナーが自ら支配している会社に不自然な取引をさせ、不当に税金の額を減らしていると税務署長が判断した場合には、課税当局はその不自然な取引をなかったことにできる、という規定です。

この規定を使って、「株式取引は実質的に支配権が移動を伴うものではなく、実態のないものである」として、なかったことにすれば、相続時にはオーナーの手元に存在しないはずの株式が相続財産に含まれる、という処理がなされます。

 

なお、株式の対価として受け取った現金については、認定賞与とされて課税されるリスクも高いです。

 

③経営面の問題

法務面、税務面の問題は上記のとおりですが、それでも「バレなきゃいいでしょ」と考える人もいるでしょう。実際には税務調査官がこれを見落とすとは思えませんが、仮にクリアしたとしましょう。

しかし、そもそもの問題として、このような支配権が曖昧な会社を誰が運営できるというのでしょうか。

長年会社を思うままに運営してきた創業オーナーですと、つい感覚がなくなっていくのかもしれませんが、会社の支配者は株主以外の誰でもありません。反乱を起こしても法的に株主の意見が尊重されるからこそ、反乱は起きないのです。

創業者が亡くなって、後継者が会社を束ねるとき、最後の拠り所になるのは株式です。大金が動く会社経営では、ちょっとした理想のズレで権力闘争に発展しますし、支配権が曖昧な会社は乗っ取りの標的にもなりかねません。

したがって、税負担だけしか考えないこのような相続方法は、非常に無責任ではないかと思います。

 

まとめ

以上のように、このような相続税対策はあらゆる面で問題だらけだと考えます。世の中には税理士を名乗ってこのような無茶苦茶なスキームを売り込む輩もいると伺いますが、どうか口車に乗らないよう、ご注意いただきたいところです。

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